2021.12.08
美人すぎる唎酒師 野口万紀子の日本酒のいろは
第三十七話 家飲みを充実させよう! 選び方編①
コロナ禍で多くの人がお酒の飲み方が変化したと思います。飲食店にも行けるようになってきた一方で、一度定着した家飲み文化が続いているという人も多いようです。どんな人でも自分が美味しいと思える日本酒を選びたいと思うものですが、お店のように相談できる人がいない場合、セレクトに苦戦してしまうこともあるかと思います。今回はそんな人に向けて、日本酒の選び方のコツをお届けしたいと思います。
組み合わせで考える日本酒選びのコツ
好みの日本酒を選ぶ手がかりとして一つの基準となるのが、瓶に付いているラベルの情報です。”おりがらみ“や“ひやおろし“など聞き慣れない言葉や、難しい漢字ばかりが並んでいて、一体何を基準に選べばいいのか分からないという人もいると思います。でも、実は日本酒によく記載されている「キーワード」を覚えておくだけで、自分好みの日本酒を選ぶのがグッと楽になるんです。
①スッキリした飲み口を堪能したい!
大吟醸・吟醸酒・本醸造
②フレッシュ感を楽しみたい!
新酒・搾りたて・生酒・生貯蔵酒・生詰め酒・あらばしり・おりがらみ
③華やかな香りを感じたい!
大吟醸・協会9号酵母・協会10号酵母・長野酵母
④甘みを堪能したい!
全麹・四段仕込み・貴醸酒・古酒
⑤まろやかな風味を楽しみたい!
ひやおろし・中取り
⑥豊かな重厚感を感じたい!
原酒・純米酒・無濾過
⑦しっかりとした酸味を味わいたい!
生酛・山廃酛
⑧重厚な熟成感を楽しみたい!
古酒・貴醸酒
例えば、フレッシュ感とずっしりとした重厚感を味わいたいなと思ったら、生酒の原酒をセレクトするといった具合に、日本酒それぞれの原料の特徴や造り方の組み合わせによって、お好みの味わいや香りを探り当てることができます。
ミツワネットサイト内では造り方や地域など、さまざまなキーワードから検索することができるようになっているので、口コミなどからただなんとなくネット通販しているという人は、①〜⑧の中から自分の好みの味わいを探してキーワード検索してみてください。
ちなみに日本酒用語でよく使われる “吟醸香“というのはフルーティで華やかな香りのことを指します。
吟醸香には2つ種類があって、リンゴのような香りのカプロン酸エチルと、バナナのような香りの酢酸イソアミルがあります。
フルーティーな風味が好きな方は“吟醸“という表記のものをセレクトするのがおすすめ。
ちなみに、味については、日本酒自体が適切な環境で保管されているかどうかも大切になってくるので、紫外線や照明、温度などには気をつけるようにしてください。
その日本酒がどのようなお酒なのか、情報源になってくれるラベルですが、原材料や飲用上の注意事項など様々な記載がされています。
ここでは簡単にラベルの見方をご紹介したいと思います。
胴ラベルの上部、ボトルの肩部分に貼られるラベルは、限定醸造や生酒の表示をはじめ、原料米や酵母など、そのお酒の特徴や酒造独自の格付けなどが記されているので要チェックです。
ラベルにはたくさんの情報が記載されていますが、簡単に見極めるためのポイントは2点。
「日本酒度」と「酸度」です。日本酒度は甘辛の目安となっていますが、これは蔵人が日本酒造りをするときに参考にする数値ですが、酸度が表す味の濃淡とあわせて見ることでざっくりとした味の指針を見極めることができます。
他にも「アミノ酸度」の記載があれば、味に複雑さもイメージすることが可能。
製造方法やお米の品種なども味の指針になります。必要項目以外にも、味についての説明が詳しく書かれていたり、デザインが凝っていたり、酒蔵の個性が出る部分でもあります。中には、作り手の思いなどがお手紙のように綴られているものもあって、そういう日本酒を見つけると印象に残りやすいので見つけてみてください。
地域による味の違い
日本全国都道府県にはそれぞれ独自の食文化があり、それに合った日本酒が地酒として各地で発展してきました。国税庁の全国市販酒類調査の結果から、各都道府県別の味わいの傾向を見て見たいと思います。
甘辛度・濃淡度は日本酒度と酸度(総酸)から、下記の数式に基づいて導かれる数値です。
甘辛度=193593÷(1443+日本酒度)ー1.16×総数ー132.57
濃淡度=94545÷(1433+日本酒度)+1.88×総数ー68.54
もちろん酒蔵によって味わいは異なってくるので、この分布図はあくまでも参考までとなりますが、以下の図のような地域の特性を把握しておくと日本酒選びもスムーズになるので、頭に入れておくと便利です。
各県の甘辛度(平成28〜令和元年度の平均値)
甘辛度は全体的に南の地域になればなるほど甘口の日本酒が多く見られます。
一方で例外もあって、最も辛口の数値だったのが鳥取県で-0.49です。そして最も甘口の数値だったのが大分県の0.28でした。
各県の濃淡度(平成28〜令和元年度の平均値)
濃淡度の傾向は、甘辛度のように地域の南北の傾向はあまり見られません。
最も濃醇な数値だったのは三重県と山口県の-0.69でした。最も淡麗だったのは、群馬県の-1.36です。
原料による違い
①水
日本酒はお米と水を原料とした醸造酒です。意外と知られていないのですが、お米は必ずしもその土地のお米を使っている訳ではなく、山田錦なら兵庫県などから取り寄せて造っていることも多いです。一方で、成分の8割を占める水は運搬するのが困難なため、その土地のものを使っていて、味の骨格を決めるのに大きな割合を占めると私は思っています。大きく分けて軟水と硬水の違いはクセの有無に繋がっています。
軟水
ミネラル分が少ないので、クセがなく柔らかでほのかな甘みを感じる味わい。
硬水
ミネラル分を口中に感じるので、しっかりとコシがありクリアでキリッとした味わい。
②米
どのようなお米の品種を使うのかということも、味わいに影響します。
品種だけではなく、そのお米をどのくらい磨くか(精米歩合)によっても変わってくるのです。
日本酒造りをするのに最も扱いやすいと言われている山田錦以外にもたくさんの酒造好適米が開発されていて、最近では地元産米をはじめ、自社栽培、有機米の契約栽培なども増え、選択肢は大きく広がりました。
山田錦・・・スッキリとした味わい
五百万石・・・ふっくらとした味わい
美山錦・・・優しい味わい
精米歩合とは、玄米を磨いて残った白米の割合のことを指します。たくさん磨いて精米歩合が低くなるほど雑味の少ないスッキリした味わいになります。一方で、精米歩合が高ければ高いほど、複雑で濃醇な旨味を感じる味わいに。
ちなみに、精米歩合が低ければ低い方が美味しい日本酒になるとも限りません。玄米は40%以上削るとタンパク質や脂質といった成分は大きく変化しないからです。精米歩合50%と25%の日本酒を飲み比べてみても、大きく変わらないこともあるのです。これが日本酒の面白いところ!
~最後に~
今回は日本酒選びのコツをご紹介しましたが、こんなふうにちょっとしたキーワードや特徴を知っているだけで、スーパーやオンラインショップでの購入や飲食店でのお酒選びの時もスムーズにセレクトすることができます。次回は、造りによる違いについてもご紹介していきたいと思います!
プロフィール
- 野口 万紀子
- 株式会社 5 TOKYO 代表取締役
きき酒師 / クリエイティブディレクター
東京都目黒区生まれ。女子美術短期大学卒業後、モデル、スカウトにより芸能活動を始め、8年ほどレースクィーン・モデル業を務める。外資系仏ラグジュアリーブランド、融資コンサル会社等での経験を経てた後、ライター業へ転身。日本のおもてなしについて興味を持つようになり、パーティーコーディネートのトータルプロデュースについて学び、きき酒師の資格を取得。2017年、株式会社 5 TOKYOを設立。現在では『日本酒 × ファッション・アート・伝統文化」といった、日本文化の新しい楽しみ方をプロデュースしている。日本酒イベントの企画運営や飲食店における日本酒コーディネート、セミナーや講演会への出演、執筆などを中心に活動中。最近ではTV、ラジオ、雑誌など様々なメディアにも多く出演している。
- <取得資格>
- SSI認定 きき酒師 (認定番号 No.042210)
SSI認定 日本酒ナビゲーター (認定番号 No.9338)
WSET LEVEL1 AWARD IN SAKE (認定番号 No.201039812417)
日本野菜ソムリエ協会認定 パーティースタイリスト
公益社団法人 神奈川県食品衛生協会認定 食品衛生責任者
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