美人すぎる唎酒師 野口万紀子の日本酒のいろは
第三十四話 「お酒やめるorやめない 問題」について思うこと

きき酒師
野口 万紀子

最近、メディアや私の周りでもよく見かける断酒。世界的に見てもアルコールの摂取量が減少してきているのは少し前から話題となっていましたが、新型コロナウィルスの蔓延によって、アルコールをはじめ皆の生活リズムが大きく変化しました。外出ができずにおうち時間が増えれば、それだけストレスも溜まってしまうことも多く、お家で用意して晩酌の機会が増えた人も多いと思います。日本酒に限らず、これは唎酒師としてはとても嬉しいことです。

一方でお酒との付き合い方に迷走している人も多く見かけるようになりました。お家で毎日ス○○○グを飲むのが習慣化されてしまい、日中も飲まないと動けなくなってしまうような人もいたりして、一時期話題にも上がりました。この頃SNSを見ると断酒を始める著名人が多く見られます。私の周りでもいますし、日本酒関係者の断酒も何人か見かけました。

今回は、皆がしきりにアルコールとの向き合い方について悩んでいるということについて、改めて考えてみたいと思います。ここでお話しするのは、あくまでも私の個人的な考え方ですので、持病やそれぞれの悩みがある方は専門家に相談して参考までとしてくださいね。



私にとってのお酒との向き合い方

私は親から譲り受けた生粋の飲兵衛なので、どんな時もお酒を飲みたい時期がありました。このように話すと、アル中のように思う人もいるかもしれませんが、アルコールを飲まないと元気になれないといった依存的な意味ではなく、生活の中に自然にお酒があるライフスタイルに憧れていたのかもしれません。基本は外飲みメインなので家では飲まず、機会飲酒でした。誰かとのコミュニケーションを通して、もしくはお店の空間を楽しむためのひとり飲みが多かったです。

この頃はまだ、日本酒の仕事をしていなかったのですが、人生にタバコはいらないけどお酒はなくてはならないものだ!と確信し、共に生きていく覚悟を決めていました。お酒自体が強かったので、酔う感覚が少ないためについついたくさん飲んでしまうこともあるのですが、どんなお酒なのか知りたい欲求もふつふつ湧いてきて、気づけば自然にお酒の勉強もしていました。

イメージで言うと、ヨーロッパの人は朝からワインとか飲みますよね。昼からカップルやお友達同士で乾杯していて、日本にはないゆるりとした時間が流れている。あんな感じです。これがなぜか日本でやると、昼から飲んだりしてダメな人間、、なぜか背徳感を感じるから不思議です。ライフスタイルの中にお酒が当たり前にあって欲しかったし、それは今でもそう思っています。

そんな私でも、お酒との付き合い方には簡単なルールを設けています。

(1)距離感を保つ
お酒は魔法。距離感が大切です。使い方(TPOや自分のキャパシティ)を間違えるととんでもないことになりますが、ちゃんと正しく飲めば素敵な魔法がかかります。

(2)冒険も大切
特に男性は決まったお酒に偏りがちですが、お酒には冒険心が大切。普段飲まないものも手を出してみましょう。味も飲み方も量も全てが違って絶対に世界観が広がります。

(3)時々お酒との向き合い方を見直す
ここが一番重要です。自分にとってお酒とは何か、何のために飲んでいるのかを一度整理しておくと飲む種類やペースも決まってきます。


お酒を飲む理由、やめる理由

さて、ここで改めてお酒を飲む理由って何なのか考えてみましょう。
お酒好きの人にはざっくり分けて3パターンあると思っています。あくまでも自論なので悪しからず。

<<お酒好きの人4パターン>>

(1)食通である
食通の人は、総じてお酒好きな人が多い印象。食べ物とのペアリングを楽しんだりする一環で、お酒も飲みたいと言う人です。お酒単体でと言うよりは、食べながら飲むタイプで、メインはお食事の方。いかにお食事を引き立ててくれるお酒かを重要視しがちです。

(2)酒通である
酒通の人は、お酒自体が好きなので、食通の人と近いようで少し異なり、飲みながら食べたいという願望があまりありません。というか、飲み始めると食べられなくなってしまうし、ほんの少しの漬物やナッツ程度で何杯でも飲めると言うのがこのタイプ。

実は私自身も比較的このタイプなのですが、何かお腹に入れないと身体を壊すので、がっつりお酒だけ飲みたい日は何か食べてから飲みに行ったりします。

(3)早く酔いたい
アルコールが回ってきてフワァと酔ってくる感覚が目的の人。酔えれば何でもいいので、アルコール度数の高いウィスキーやケミカルな缶チューハイを毎日飲んでいたりします。味やペアリングが好きと言うよりは、酔う感覚が好きでストレス発散している節があるので、こちらもやや危険。身体を壊しがちです。

(4)コミュニケーションの手段である
お酒の場でのコミュニケーションが好きなひと。お付き合いで飲みにいくとか、お酒自体が好きと言うより人が好きな人かもしれませんね。付き合っているうちに、ついつい飲まされ過ぎちゃったり。。心当たりありませんか?!(笑)

<<お酒を飲まない人4パターン>>

(1)味が嫌い
お酒の味自体が好きではない人。食べ物の食わず嫌いも含めて、経験不足の場合もあります。お酒の味はそもそも子供の頃は、苦くてまずい!しかなかったと思いますが、大人になってくるとあの苦いビールが美味い!となるわけで、お酒も苦手な種類があっても色々なものを経験すると好きの基準が変化します。お酒の美味しさ=経験値だと私は思っています。

(2)身体に合わない
不可抗力です(笑)アルコールアレルギーの人は飲むと大変なことになるので、決して無理に飲ませないであげてください。「お酒飲めないんだよね」の人にも色々理由がありますが、アレルギーや病気の人は危険なので理解してあげましょう。また、酔ってフラフラになっている姿を人に見られたくないという人もいます。酔った時の量を基準に、自分のリミットを把握しておくことは非常に重要です。

(3)無駄な付き合いに参加したくない
会社の上司のお誘いなどに付き合いたくない!というのは最近よく聞きますよね。これもあくまで自論ですが、お酒の時間が無駄になるかならないかは自分次第です。もちろん会社で決められた時間以外はプライベートを優先したいなど、当然の想いもあります。しかし私の経験上、全てとは言いませんが、お酒の場だからこそ聴ける話や、何かのチャンスを掴み取ることは実際あります。社会経験的にも、うんちく話など一見面倒な話に見えても勉強になることはたくさんあります。上手に抜け際を見極めて参加するのはアリではないでしょうか?

(4)身体に悪そうなものを断捨離したい
炭水化物抜きや糖質抜きなど、何かの極端な断捨離に走る人も増えています。オーガニック主義の人も、実は自然由来のものの方が成分のコントロールがされていないのでトラブルを起こしやすかったりするのですが、実態を知らずに何か大きな側面を断捨離してしまうことは、ヘルシーとは言えません。実際に管理栄養士や美容のスペシャリストなど専門家に聞いてみると、間違っていることもたくさんあります。かのスティーブ・ジョブズはニンジンやリンゴしか食べず厳格なビーガン主義でしたが、固形物をほぼ摂らず膵癌で亡くなりました。アルコールも適量を守れば飲酒をしても深刻な影響には及びません。


お酒をやめた後に待っているもの

このように見ると、お酒を飲む飲まないには個人的なことも含めて、様々な理由があると思いますが、私がここで感じたのは「飲む or 飲まない」の極論の考え方です。お酒は嗜好品なので、飲む飲まないは本当に本人の考え方次第だと思いますが、お酒をやめた後に待っているものは一体何でしょうか?

調子に乗って飲みすぎた次の日、二日酔いになることもなく、健康への不安が軽減されるかもしれません。頭の中はクリアで冴え渡ってるかもしれません。一方で、正直退屈でつまらない時間もやってきます。これまでのように仕事が終わって一杯やっていた晩酌がなくなり、お友達とのコミュニケーションの場でも何か物足りなさを感じるかもしれません。

これはどちらが正しいとかの問題ではなく、お酒をやめた後やってくるのは、本来やるべきだった自分の課題に向き合わなければならない時間です。お酒をやめても解決しない問題があるということが、お酒をやめた後にわかることだと思います。

病気や何かの重大な問題を抱えている人は別かもしれませんが、自分にとってお酒とは何なのか?何のために飲んでいるのか?そして生活の中にどのように取り入れるのがベストなのか?白か黒かではなく改めて考え直してもらいたいと思います。

無くても生きていけるものの価値

人生に無くても生きていけるものはたくさん存在します。生きること以外必要ないものをできるだけ省いた人生は本当に豊かでしょうか?余命が長くない人間が長生きするかしないかの違いは、恋や芸術や音楽など、一見生きるのにはなくてはならないものを経験した人ほど長生きすると言われています。

嗜好品や芸術が存在するのは、人生には無駄なもの(遊び)がないと人間は生きていけないからです。これは、決してお酒が飲めない人は人生を損しているとか、そういうということを言いたいのではありません。大切なのは、飲んでも飲まなくても残される自分の宿題から目を逸らさず、自分なりのルールの中で向き合っていくことではないでしょうか?

このように考えてみると、お酒とは本当に大人の飲み物であると感じますね。恋愛と同じで、お酒といい関係でいることが大切と考えると、その距離感を間違えるとただの依存になりますよね。それが最近よく耳にする「お酒ってカッコ悪い」の原点かなと思います。

お酒に限らず、なくても生きていけるものの価値や向き合い方について、一つの文化的視点からも考えてみて欲しいなと思っています。

~最後に~

いいところ悪いところを知った上で向き合うのは人間と同じです。ちなみに日本酒はあらゆる国の食事に合いやすいので、<<お酒好きの人4パターン>>の中の一番健康的な飲み方である“食通の人“にも適したお酒だと思います。私も食べながら嗜むスタイルをスキルアップさせていきたいと思います。

ご安心ください。私は引き続き日本酒「飲む派」です(笑)

素敵な日本酒ライフを♡︎
文:野口 万紀子

プロフィール

野口 万紀子
株式会社 5 TOKYO 代表取締役
きき酒師 / クリエイティブディレクター

東京都目黒区生まれ。女子美術短期大学卒業後、モデル、スカウトにより芸能活動を始め、8年ほどレースクィーン・モデル業を務める。外資系仏ラグジュアリーブランド、融資コンサル会社等での経験を経てた後、ライター業へ転身。日本のおもてなしについて興味を持つようになり、パーティーコーディネートのトータルプロデュースについて学び、きき酒師の資格を取得。2017年、株式会社 5 TOKYOを設立。現在では『日本酒 × ファッション・アート・伝統文化」といった、日本文化の新しい楽しみ方をプロデュースしている。日本酒イベントの企画運営や飲食店における日本酒コーディネート、セミナーや講演会への出演、執筆などを中心に活動中。最近ではTV、ラジオ、雑誌など様々なメディアにも多く出演している。

<取得資格>
SSI認定 きき酒師 (認定番号 No.042210)
SSI認定 日本酒ナビゲーター (認定番号 No.9338)
WSET LEVEL1 AWARD IN SAKE (認定番号 No.201039812417)
日本野菜ソムリエ協会認定 パーティースタイリスト
公益社団法人 神奈川県食品衛生協会認定 食品衛生責任者

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ライター紹介

アーティスト
上宮 三佳(かみやみか)

群馬県出身。ぐんまの地酒大使
Piano&Vocalユニット「Sunray in Rain(サンレイ イン レイン)」のVocal、モデル、ライターとして活動中。日本酒好きが高じてユニットオリジナル曲「日本酒のうた ~二つで一つだね~」をリリース。

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きき酒師
野⼝ 万紀⼦

株式会社 5 TOKYO 代表取締役
きき酒師、クリエイティブディレクター。『日本酒 × ファッション・アート・伝統文化」といった、日本文化の新しい楽しみ方をプロデュースしている。

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ミツワネットショップ
店長荒井

ミツワネットショップ店長
有限会社ミツワ酒販 代表取締役
創業以来四十余年、食の安全、美食へのこだわりをモットーに、関東中心に約700軒の小売店様への酒類、食品類の卸業を行っている。